ハードコンタクトレンズのメリット・デメリット
ハードコンタクトレンズはどんなレンズ?
ハードレンズは直径おおよそ8.8mmのプラスチックのような素材で作られた文字通り硬いレンズです。日本人の成人の黒目の平均的な大きさが縦11.5mm、横12.0mmと言われていますから、黒目より小さいサイズのレンズということになります。
昔のハードレンズはレンズ自体が酸素を通さない素材で作られていました。そのためレンズを黒目の上に乗せると黒目に酸素が行かなくなってしまいます。そこでハードレンズを黒目より小さくし、瞬きするたびに黒目の上を動くようにデザインしました。
動くことにより黒目の上にはいつも酸素をたくさん含んだ新鮮な涙が循環しますし、黒目のレンズがのっていない部分がレンズの動きに伴い、くまなく変化しますから、その部分には酸素が供給されやすいという訳です。
現在ハードコンタクトレンズの装用者割合は2割~3割程度と言われています。使い捨てコンタクトレンズの普及により、ハードコンタクトユーザーは本当に少なくなりました。
そのためコンタクトレンズ通販サイトを見てみても、ハードコンタクトの取り扱いをしていないサイトも沢山ありますし、コンタクトレンズ量販店(提携眼科あり)でもハードコンタクトの対応が可能なスタッフがいない店舗も多々あると耳にしています。残念ながらそれが実情です。
ハードコンタクトにはソフトコンタクトにはない優れた点が沢山あります。現在ソフトコンタクトの愛用者の中にも、本来出あればハードコンタクトを装用した方がはるかに望ましいという人も沢山いると思われます。
それではハードコンタクトの代表的な長所と短所を確認していきましょう。
ハードコンタクトのメリット
- ●ケアが簡単(レンズをすすぐ時に水道水を使用することができます)
- ●乱視が矯正できる(乱視のタイプによってはハードレンズでも矯正できない乱視があります。
- ●寿命が長いこと。(O2レンズでおおよそ2年前後と言われています)
ハードコンタクトのデメリット
- ●異物感が強く、慣れるまでにおおよそ1週間~2週間ほどかかる
- ●激しい運動やちょっとした視線の動きで、レンズがズレたり外れたりする可能性がある
- ●ゴミが入ると痛い(裏を返せば、目に発生した異常にすぐ気付くということ)
ハードレンズの異物感について
やはりハードコンタクトで一番心配されるのがこの「異物感」です。
ハードレンズは先にも説明したように黒目の上を動くように作られていますので、どんない性能の高いレンズ(EXレンズなど)でも異物感はそれなりにあります。では慣れてしまったら異物感はなくなるのでしょうか?いいえ。異物感がなくなることはありません。
慣れてくることによって「気にならなくなる」が正解です。皆さんがよくつける腕時計や女性の方がつけているネックレスなどと同様です。つけている感覚はいつでもあるのですが、普段気にしていないのではないでしょうか?
慣れるまでには多少の我慢は必要です。多くの方がある程度我慢して装用することにより慣れてくると思います。「あと少し頑張れば使えるようになっていたのに」という人がいることも事実です。
しかしやはりどうしてもその感覚がダメっていう人がいるのも事実です。そういう方は無理をせずに、装用感の楽なソフトレンズを選ばれることをおすすめいたします。
ハードレンズって硬いけど目にキズはつかない?
ハードレンズは黒目の上に直接のっかっているわけではありません。黒目の上は常に涙で覆われています。ハードレンズはその涙の上に浮かんでいると思えばいいですね。そしてさらにその上から涙がかぶさるようにハードレンズを覆っているのです。
ハードレンズは涙と涙の間に挟まれ、表面張力で落ちないようになっています。エッジと呼ばれる部分を利用して、スキーと同じように黒目の上にある涙の上を滑らかに滑っているわけです。だから目にキズつかないようになっています。
でもハードレンズと黒目の間に異物(ゴミ)等が入ってしまうとキズが付いてしまったり、また乾燥が強くなると涙は少なくなりますから、いわゆる雪の少ないところでスキーをするようなものなので、異物感が増してきたり場合によっては目にキズがついたりしてしまいます。だからそのようなときにコンタクトレンズ専用の目薬を点眼したりしてそれを防いでいるわけなんです。
ハードレンズがズレて目の奥の方に入って取れなくなってしまうこともあるの?
ハードレンズの短所の一つに白目にズレる場合があります。でも安心してください。目の奥の方は下の図のように袋状になっているので取れなくなってしまうことは絶対にありません。また人間の白目の部分は今日幕ただご自身で取れなくなってしまった場合は決して慌てずに眼科さんを受診してくださいね。
ハードレンズの乱視矯正力
ハードコンタクトの最大の魅力と言っても過言ではないのが「乱視矯正力」です。
その秘密はハードレンズの硬さにあります。乱視とは一言で言うと「黒目の歪み」と言うようによく言われます。
日本人の成人の角膜径は、縦約12mm程度、横約11mm程度と言われています。縦径と横径が異なるということは、黒目自体は丸い円ではなく、少し歪みのある円ということなります。
円は立体的に膨らませてみると球面になりますが、縦径と横径の異なる楕円を立体的にすると球面ではなく、上の図のようなラグビーボールのような非球面になってしまいます。
つまり人間の目はだれでも少なからず歪んでいるということになります。ところが乱視の強い方の場合その歪み方が強い訳です。
逆に考えると歪んでいる黒目をまん丸い状態にしてあげれば「乱視が矯正できる」と言う訳です。例えばでこぼこ道を歩きやすくするために板とビニールシートが置かれていたらどちらを利用しますか?
ビニールシートを選ぶ方はいないと思います。なぜならビニールシートをでこぼこ道に敷いたところでその形がそのまま残ってしまいますね?でも硬い板なら上から置くだけできれいな平らな形になりますね。そして隙間は涙がシッカリと埋めてくれます。
それがハードレンズとソフトレンズの違いなんです。乱視のある方がハードレンズを薦められる理由、乱視のある人がハードコンタクトを装用することにより、良好な視力を得られる理由はそこにあります。
アレルギーのある人はハードレンズの方がいいの?
アレルギーの症状をお持ちの方は、アレルギーのない方と比較するとアレルギー性の結膜炎などにもかかりやすい傾向があります。アレルギー性結膜炎にかかるとコンタクトレンズが刺激となって目やにや充血とかゆみと言った症状がでてきます。目やには涙の中の分泌物が固まってできるものです。
ハードレンズの素材はプラスティックのような素材でできていますので、基本的にレンズの汚れやすさはあるもののレンズ自体が汚れを吸収することは少ないわけです。一方ソフトレンズは、例えて言うなら「乾燥ワカメ」のようなものです。
つまりソフトレンズがあのように柔らかいのは、レンズが水分を吸収しているからなんです。ですから涙の分泌物が多いということはその分泌物までをソフトレンズが吸収してしまうためにレンズの劣化が早く、その劣化したレンズが刺激となりアレルギー症状が悪化すると悪いサイクルに陥ってしまいます。
もちろん今は、汚れる前にレンズを交換する使い捨てコンタクトがありますから、もしアレルギーながらソフトレンズを希望されている方は、毎日捨てるワンデータイプをお薦め致します。
ハードレンズと目薬
ハードレンズの素材はプラスティックのような素材で作られているので、目薬を点眼しても薬の成分をレンズが吸収してしまうと言うことはありません。でも乾燥感を改善するための眼薬であればやっぱり「コンタクトレンズ専用」の目薬をお薦め致します。
また目の病気や黒目が傷がついたときに使用する目薬であれば、それ以前にレンズの装用を中止することをお薦めいたします。それでも中止が困難な場合は眼科の先生と相談することをお薦めいたします。
ハードコンタクトでスポーツはできないの?
ハードレンズの短所の一つに、ちょっとした視線の変化でズレたり外れたりするという点があります。
もちろん、その方の目の大きさや黒目の形状によって個人差はあります。しかしズレやすい、外れやすいということではありません。もしそうであったならこれだけ長きにわたり愛用されることもなかったはずです。
念のために避けておいた方がいいスポーツを紹介しておきます。
★柔道 ★空手 ★ボクシング ★ラグビー ★サッカー ★相撲 ★レスリングなど
上記のように格闘技系要素の強いスポーツは、「目に衝撃や圧力が加わり」、「レンズが外れたり」、場合によっては「目の中でレンズが破損する恐れ」もありますので絶対に避けた方がいいスポーツです。もしこれらのスポーツをコンタクトレンズで、と言うことであれば、必要に応じてソフトコンタクトを併用がおススメです。
★水泳は水中メガネ等をかけても紛失する可能性も高いので避けた方がいいでしょう。
ではそれ以外のスポーツ、例えば卓球やバドミントン、テニス、ダンスなど運動量は激しくても格闘技系要素のないと思われるスポーツはハードコンタクトでしている人はいます。野球やソフトボールなどは本格的に使用と思うのならソフトコンタクトの方が安心でしょう。
いずれにしても日常の生活で装用していく中で、どの程度までの動きなら問題がないのか、ご自身で判断していくしかないかもしれませんね。