煮沸消毒
使い捨てコンタクトレンズが日本に上陸して早34年が経過しました。
1週間の連続装用タイプから始まり、ワンデータイプ、2ウィークタイプと乱視用、遠近両用、カラコン・・・
それまでは長期装用型のレンズ(ケアをしながら一定期間使用するレンズ)しかありませんでしたから、含水性のレンズであるソフトコンタクトレンズには消毒が必要でした。
一昔前は、ソフトコンタクトの消毒と言えば、「煮沸消毒」が一般的でした。加熱して消毒をしますので消毒効果は高かったのですが、レンズの変形や劣化、タンパク質の固着などその分レンズにもダメージを与えていました。また時間的にも手間のかかるケアでした。

その後は電気で熱を加えて滅菌する方法に変わり、とても楽になりました。とは言えソフトコンタクトレンズのケアが「面倒」と言われていたのは正にこの「消毒」にありました。

加熱して消毒する以上、レンズケースも少なくともレンズの寿命と言われている1年半前後は一定の加熱まで耐えることのできるモノじゃなくてはなりません。
しかし過熱による消毒は同時にレンズにも大きなダメージを与えていました。レンズへのダメージはそのまま目へのダメージに直結しています。
そのような背景のもと、現在は過熱による消毒ではなく、薬品を利用した消毒方法にかわっていきました。
マルチパーパスソリューション(MPS)
マルチパーパスソリューションは、主に塩酸ポリヘキサニド(PHMB)や塩化ポリドロニウムなどの消毒成分を含んでいます。これらの成分は、コンタクトレンズに付着した微生物を減少させ、レンズを清潔に保つ役割を果たします。
1本で洗浄・すすぎ・保存・消毒までできるので、消毒効果は過酸化水素ほど強力なものではありません。その分、機械的な刺激をレンズに加えて(こすり洗い)洗浄しなくてはなりません。
ただ中にはこすり洗いをしなくても消毒ができると勘違いをする人もいるようです。こすり洗いを怠ると、その取り残された汚れがアレルゲンとなり、アレルギー結膜炎などの症状を引き起こす人もいますので、注意が必要です。
ご家族内で、コールド消毒によるケアを利用している人と、マルチパーパスソリューションを利用している人がいる場合は、お互いの貸し借りなどの際、注意が必要です。またマルチパーパスからコールド消毒にケアの方法を変更した場合なども注意が必要です。

こすり洗い不要のケア用品
過酸化水素が主成分のケア用品
こすり洗い不要なので、レンズを破損したりする心配もありませんしケアも簡単ですが、その分過酸化水素という強力な液体を使用しています。その液体がそのまま目に入ると眼障害を引き起こしてしまうので、過酸化水素を目の中に入れても害のないものに中和する必要があるのです。
ところが中にはその中和を忘れてしまったり、中和時間が不十分なままで装用してしまい、眼障害を引き起こしているケースがあるわけです。
また過酸化水素のケアにはメーカーの製品ごとに少しずつ使用方法に違いがありますので、使用する場合はケア製品の使い方は正確に理解してから使うようにしましょう。
ヨウ素を使用したケア用品
うがい薬等にも広く使用される消毒成分「ポビドンヨード(ヨウ素)」は高い消毒力を持ち、浮遊菌だけでなく、ケース付着菌に対しても高い消毒効果を発揮します。タンパク分解酵素を配合していますので、レンズに付着したタンパク質やそれに付随する汚れをしっかり除去することができます。こちらもこすり洗い不要にはなっていますが、外した後にこすり洗いすることを推奨しています。

何れもにも共通して言えるのは、従来タイプのようにレンズを加熱しないため、レンズの寿命と言う点ではレンズに優しいケア用品になっています。
そしてなによりもケアが簡素化しました。
レンズケースは購入するたびにセットで付いてくる
煮沸消毒の時代は耐久性のあるソフトレンズケースを使用していたので、同じレンズケースを長期間使用していましたが、最近のレンズケースは過熱はしないため、吹きこぼれ防止用のゴムパッキンもなく、簡素化されたものになり、その代わり衛生面をより重視し、ケア用品1箱1箱の中にレンズケースを同梱し販売。ケア用品がなくなった時点でケースも新しいものに変更させるというスタイルに変わっていったのです。

